■ねどこ・2


そもそも、政宗が悪い。

誰に説教されるまでもなく、それは解っていた。
家臣の誰にも何も言わず、こっそり幸村と果たし合いに来たからだ。
それはそれであまり悪いと思ってないのだが、そこをうっかり正体不明の敵に見つかって狙われたあたりはうかつだった。次からもっと、人目につかない場所で果たし合わなければならないだろう。
更に問題は、政宗を追ってやってきた小十郎が、暗殺者の手にかかって怪我してしまったことだった。戦場では常に背後を任せているが、3日も起き上がれない大怪我をするのは稀だ。それだけダメージが大きかったのだろう。
だから反省して、この退屈な小屋の中でも大人しくしていたのだが、やはり飽いてきた。
ついでに反省心も薄れてきていた。
もうちょっと小十郎の回復が遅れていたら、怪我人を放り出して出かけてしまっていたかもしれない。とは口に出さなかったのだが。
起き抜けに顔を合わせた瞬間、かつての傅役には見破られていた。
「早めに回復する必要がありそうですね」
ため息交じりに言うところがまた憎ったらしい。
「お前、目覚めて主の顔見て開口一番がそれか?」
呆れてやったら、まじまじと顔を見られた。
「お元気そうで何よりです」
「遅ぇよ」
しかも、修辞のない素っ気なさがご機嫌伺いには程遠い。もっとも小十郎の場合、ちゃんと見るべきところは見、政宗の不調など誰よりも早く見抜くのは知っているから、今さら格式張った挨拶など必要ないのだが。
それより、とりあえず自分の怪我の心配をしたらどうなんだろう。
「早く治せ」
居丈高に命令したら、きっちり頭を下げられた。
「承知」
まだ傷も痛むだろうに、もう少し弱音とか愚痴とか吐けないもんだろうか。

全く、面白くない。



    戻ル